1996 / GameTec / Imagexcel / PS SS 3DO PC
PSソフト「Hard Rock Cab」を紹介!
殺るか殺られるかの荒廃した都市をタクシーで爆走!どこかの映画で見た世紀末が体験できるエスケープ・フロム・クアランタイン!PS洋ゲー界に漠然と君臨するスラッシャー&バイオレンスな本作の魅力を紹介していきます。
地獄の逃避CAB
1996年発売の本作は、PS・SS・3DOのマルチプラットフォームで発売された”元祖クレイジータクシー”との呼び声高い作品。SS版では「デス・スロットル 隔離都市からの脱出」、3DO版では「Quarantine」と、何故か機種ごとに名前とジャケが異なっているのが面白い。ちなみに3DO版の読みは「クアランタイン」ではなく「カランティーン」です。100%誤植でしょう(笑)
ゲームシステムについては、タクシーで街を流し、乗客を拾っては目的地に届け報酬をもらう…。そうまんまクレイジータクシーなのですが、画質は超荒く、操作性も劣悪です。だがしかしこのゲーム、一部では熱狂的なファンが存在し、カルトゲームとして確固たる地位を築き上げているのをご存知でしょうか?
まずはその濃すぎるストーリーからどうぞ。
監獄都市 KEMO
時は2048年近未来、舞台となるのは「ケモ・シティ」というふざけた名前の都市。
かつては平和だった街も、今や見るも無残な極悪都市となり果ててしまった…。
この街は2029年に設立された超巨大多国籍企業「オムニ社」によって牛耳られており、そのオムニ社による隔離都市計画「クワランタイン計画」によって街の四方に壁が作られたのは2032年。
当初は市民を犯罪者から守るためとして計画されていたが、実際は自由に出入りも出来ず隔離され、瞬く間に街全体が巨大な刑務所と化してしまったのです。
そんな中オムニ社は犯罪者の”凶悪な発想”を制御する働きを持つという薬品「ヒドロゲン344」を街の水源に投下。犯罪者のコントロールを目論むが、薬品が水中のバクテリアなどと反応し凶悪なウィルスとなって街の人々をゾンビ状態に変えてしまう……。
ちなみにですが、この”薬品によってゾンビになった”というのは日本版のオリジナルで、車も通行人も全て攻撃対称な本作は、やはりローカライズする際に変更が入ったのでしょう。
正しくは”薬品によって人々の気が狂い殺人者になってしまった”なので厳密に言うと海外版はまだ「人間」ということになります。また、残念ながら血の色まで変更されており、日本版はスライムみたいな緑となっています(笑)
プレイヤーはこのクワランタイン計画によって全てを奪われたタクシードライバー、「ドレイク・エッジウォーター」となり、荒廃したこの街「ケモ・シティ」から脱出するため、情報を知っている人を探しながら今日も街を流すのです。
そう、タクシードライバーをやっている理由というのは”脱出のパスワードを知る人物に出会うため”と、そんな時間あったらもっとましな方法しろよとでも言いたくなる効率の悪い方法(笑) しかし、人と関わるには客商売しかありません。仕方ないのです。
ヘイ・タクシー!
ゲームシステムとしては街を流し、客を乗っけて時間内に送り届けるというシンプルなものですが、第一にグラフィックが荒すぎてもう客なのかゾンビなのかわかりません。一応、手を挙げていたり口笛で呼び止められたりするのですが、道のど真ん中に居る事が多く高確率ではね飛ばしてしまいます(笑)
なんとか慎重に乗せると今度は制限時間以内に目的地に向かうわけですが、意外とシビアで慣れない内は客に怒号を浴びせられることもしばしば。画面右下には目的地を示す「簡易レーダー」があるのですが、これは目的地までの相対距離を示すもので、必ずしも矢印通りに進めばいいというものではありません。
かなり複雑な街並みをしている本作では、客を乗せたら必ずマップを開き、最短ルートを確認して急ぐというのが基本的な流れ。これを繰り返してゲームを進めていきます。
個性的すぎる搭乗者達
どうにか跳ね飛ばさずに客の前に止まると、上のような画面になり目的地等が確認できます。目的地が遠かったり「こいつは乗せたくない!」となると乗車拒否も出来ます。しかし、「つい乗せちまったけどこいつやっぱめんどくせぇ!」なんて思ってしまったらどうします?答えは簡単、セレクトボタンで解決です。
押した瞬間、後部座席から客が発射され遥か彼方に飛んでいくという強制射出シート仕様!
もちろんビルにぶつけると、汚いドットが飛び散ります(笑)タクシーで間に合いそうに無かったら飛ばして送ってやりましょう。これぞ洋ゲーですね。
そして!特筆するのはこの客達がとんでもない奴らばっかなんです。
タクシー乗るにも命懸けなこの街、いろんな意味でヤバイぞ!
CASE:1 血に飢えているオネエ系
CASE:2 血の気の多いオネエ系
CASE:3 ディスコミュニケーション系
「もう何なんだよお前ら!」と思わず心の声が出てしまいます(笑)
このように一筋縄ではいかないようなキャラばかり居ており、しかもかなりのパターンがあるので客選びが非常に楽しいです。個人的な統計ですが何故か異様にオネエ系とおデブ系が多く、髪型は男だろうが女だろうがスキンヘッド・モヒカンが定番スタイルという異常事態。
内容もカスみたいなものばかりと言うのが笑えますが、たまに「私は医者だ、大至急患者の下へ向かってくれ!」なんて依頼が来るも、いざ届けてみたら「ありがとう、これで皿を割ってしまった娘の悪い腕を切断できる!」という始末。
見た目もそうですが、彼らの言動により”如何に”この街が狂気なのかが分かります。
ケモ・シティ・レジスタンス
上記のように何度か客を送り届けると、物語を進めるキーミッションなるものを依頼されます。
内容は爆弾等を目的地まで運ぶ「トランスポート系」と、ターゲットを破壊する「イリミネート系」の2つに分けられ、前者はそこまで難しくは無いですが、後者はターゲットが移動していることもあるので非常に難易度が高いです。
ミッションを依頼してくるのはオムニ社に立ち向かうレジスタンス集団(見た目共に過激派)で、「テレビ局爆破」や「プラントの破壊」などを遂行していきます。ミッションをこなしていくと、次第にドレイクは組織の人間に認められ、やがてはオムニ社に立ち向かうヒーローとしてケモ・シティ内で神格化されていくという意外に熱いストーリーで思わず目頭が熱くなります。
もちろんこのキーミッションも上記のような”意外と普通”なものだけでなく「オーバー60歳の暴走族が暴れている」、「動物園に人間の頭部を集めている連中がいる」、「金魚を湖に放して来てくれ」など、クレイジーというか意味不明なものが多いので安心してほしい。一貫してハードコアなテイストは忘れていた何かを思い出させてくれます。
武装タクシーで爆走!
車以外にも、戦車や戦闘機までもが走っているもはや無法地帯なケモ・シティ。こんな物騒な所でタクシー営業するには丸腰という訳には行きません。邪魔な車は「レールガン」や「火炎放射器」でブっ潰していきましょう。
初期装備は「バルカン砲」のみですが、各地に点在する「武器ベイ」で様々な武器を購入することが出来ます。破壊系のミッションではシビアな時間内でターゲットを破壊しなければならないので、強い武器を装備するに越したことはありません。新しいステージではまず最初に武器ベイをチェックです。
また、お金の使い道はもう一つあり「修理ベイ」での修理および強化です。このゲームでは敵の攻撃、街中の地雷、有毒物質地帯などによって恐ろしいほどダメージを食らいます。ライフが無くなると即ゲームオーバーなので、こまめな修理とセーブは欠かせません。修理が完了するまでがミッションです!肝に銘じておきましょう。
CABの車窓から
本作をプレイする上で忘れてはならないのがBGMの存在です。
実際のバンド(どマイナーですが)の楽曲を使用しており、ハードロックキャブの名に恥じない素晴らしい楽曲たちがプレイを盛り上げてくれます。中でも面白いのが、オルタナ・ハードロックの合間に1曲だけファニーなジャズソングが収録されており、しっぽりとジャズを聴きながらゾンビ共を轢き殺すのはなかなか乙なものであります(笑)
以下、いくつかかいつまんで紹介していきます!
You Am I / Berlin Chair
オーストラリアのパワーポップ・ギターロックバンド。
このゲームのサントラの1曲目に相応しい骨太なオルタナサウンドを聞かせてくれる。MVはUS・AUSの2種類あり、本国版は老人がワンカットでダンスしまくるチープなMVとなっている。
Smudge / Ingrown
90年代に活動していたインディーロック・ギターポップバンド。
疾走感のあるギターにヘロヘロのボーカルがなんともゲームにマッチしており、個人的にはこのサントラのベストトラックに挙げている曲。漆黒の街をキャブで爆走しながら聴こう。
Godstar / Lie Down Forever
あのレモンヘッズのメンバーも在籍していたサイケデリックポップバンド。甘酸っぱくメランコリーな楽曲はこの監獄都市に一服の清涼剤をもたらしてくれる。実は上記のSmudgeのメンバーも在籍していた知る人ぞ知るバンド。
Custard / The Wahooti Fandango
こちらが噂のファニーなジャズソング。このCustardというバンドは本来インディーロックのバンドだが、何故かこのゲームにはアルバムトラックであるネタ楽曲が収録されている。しかし侮るなかれ、おふざけ楽曲だがめちゃくちゃ良いぞ!(笑)
いや、「ハードロックバンドはどこにおるんや?」と、聞こえてきそうなぐらいのインディー系ばかりですが、ちゃんとゴリゴリのロックも収録しているので安心してください(笑)というか、タイトルの「ハード・ロック・キャブ」は日本独自のものなので、別にハードロックが少なくても何も問題は無いぞ!原題は「Quarantine」(隔離・検疫)ですからね。
また、収録されているバンドは全てオーストラリアのバンドの楽曲となっており、「オーストラリアのゲーム会社が作ったのかな?」と調べてみたところ、驚愕の事実が発覚しました。実はこのゲームを開発した「Imagexcel」はこのあと「Take-Two」に買収され「Rockstar Games」の一部となり(現在のRockstar Toronto)、後に「The Warriors」や「Max Payne」、「Grand Theft Auto Ⅳ」を開発することになるのです!すげぇ!
こんなところにロックスターの遺伝子を発見できるとはですね…。古典洋ゲーは興味深い…!
洋ゲーマーならマストバイ
以上なかなかのトンデモゲーですが、古き良き洋ゲーの匂いを感じさせる迷作だといえるでしょう。難易度はやはり高く、最後まで進めるのはなかなか骨が折れるのですが、気合の入ったOPや斬新なゲームシステム、奇天烈な住民たちは一見の価値があると思います。
2024年現在ハードロックキャブはゲームショップで普通に購入できます。
少し前は2000円~ぐらいの価格でしたが、今は少し上がってしまって大体3000円~5000円ぐらいでよく見かけるので興味がありましたら是非プレイしてみて下さい。以上!