2005 / Rockstar Games / XB PS2 PSP
北米版XBOXソフト「The Warriors」を紹介。
1979年公開、「ウォルター・ヒル」監督の同名映画のゲーム化で、製作は「ロックスターゲームズ」。ちなみにXBOX/PS2共に国内本体では作動しません。PSP版のみ国内本体で作動します。
公開中止の問題作
ある夜、NY中のギャングの構成員達が召集され、ブロンクスの公園に集められた…
そこで登場したのがギャングチーム「RIFFS」のリーダーである実力者サイラス。
「ここにいる皆で共闘すれば俺たちは6万人にもなる大組織だ、NYの警察は2万人、俺たちが協力すれば警察もマフィアも怖くねぇ!NYを乗っ取れるぞ!分かるか?」
会場の熱気が最高潮になった瞬間、銃撃され倒れるサイラス。「ROGUES」のリーダー、ルーサーによる仕業だったのですが「ウォリアーズだ!ウォリアーズが犯人だ!」と叫びちらします。濡れ衣を着せられてしまったウォリアーズ達は、無事ホームであるコニーアイランドに帰ることが出来るのでしょうか?こうして彼らの長い夜が始まるのです…
公開当初、熱狂したストリートキッズによる殺人事件が起きたり、実際にギャング同士が抗争したりと問題になり、公開中止になった州もあったという曰くつきの作品。20数年の時を経てゲームとして蘇った本作では、当時のストリートの空気に触れることが出来ます。
ニューヨーク1970
まだまだ治安の悪かった70年代のニューヨーク。そこには無数のギャングチームがひしめき、日々抗争を繰り広げていました。主人公となるのはニューヨーク・コニーアイランドがホームの「ウォリアーズ」。赤いジャケットにWのロゴ、プレイヤーはウォリアーズの一人を操り、敵対チームと戦っていきます。
基本的に数人のメンバーたちと行動を共にするのですが、やることといえば店の鍵をピッキングで壊して店内を荒らしまくり、壁にグラフティしたと思えば停めてある車からカーステレオを盗んだりと、ワイルドな悪行のオンパレードです。
そんなことをしていれば当然警察が飛んでくるのですが、警察がかなり手強く、警棒でぶん殴られながらもどうにか死角に隠れてやり過ごしたり…彼らの日常はとにかくワイルドなのです。
男は黙って素手ゴロ
このゲームの最大の肝となるのがやはり多数VS多数の大乱闘にあります。戦闘はオーソドックスにパンチ、キック、掴み技などの格闘なのですが、コンボを組み合わせたり、仲間との連携攻撃や、ゲージが溜まると攻撃力アップのバーサークモードも発動出来たりと、意外と多彩で、これが乱戦になるんですからもうえらいことです。
また、相手を掴むと好きな方向に放り投げられるのですがこれがなかなか良く、屋根の上から落としたり、おいちゃんたちが焚き火しているところに放り込んでやったりなんかもできます。壁際で投げると相手の頭を思いっきり壁にガン!と叩きつけるのですが、この攻撃はカメラアングルが変わり、叩きつけられる所が「見てくれ!」と言わんばかりに拝める仕様です。
武器としては、落ちている「バット」や「角材」、「鉄パイプ」などの凶器も使用でき、中でも「空きビン」や「レンガ」での一撃は重く、投擲もできます。
やられたらやり返せ!
ウォリアーズでは実に様々なギャングチームが登場します。格好も様々でチーム毎に異なるユニフォームに身を包み、ウォリアーズの行く手を阻んできます。
コニーアイランドのライバル、ロゴがイカす「DESTROYERS」、駅に現れるローラースケート野郎の「PUNKS」、緑の無地T、地味な格下チーム「ORPHANS」、可愛い顔した極悪レディース「LIZZIES」、他にもチャイナタウンの「SAVAGE HUNS」やハーレムの「BOPPERS」などなど16チームにも上るギャングたちを相手に争いを繰り広げていくのですが、中でも特筆すべきクールなチームを紹介しましょう。
「Hi-HATS」
(from Soho)
ホームはソーホー、遊園地がアジトのグラフィティ集団。
白塗り化粧に、ボーダーT、頭にはハイハットという、どこかサブカル臭漂うこのピエロ達を仕切っているのが、自画像をアンディ・ウォーホル風にパロって飾っているアートなデブピエロ。
しかも、その肖像画にペンキをぶっ掛けるイベントもしっかり用意されてます(笑)
他にも4チーム対抗のストリートグラフィティ対決など、ハイハッツの周りでは何かと洒落たイベントが発生するのも最高です。
そして、決戦が廃遊園地なのもポイントで、遊園地でのボス戦は楽しさ倍増です。映画ではオープニングにちょろっと映っただけなのですが、本作ではしっかり登場して仕事してくれてます。
「TURNBULL AC'S」
(from Bronx)
上裸にGジャン、スキンヘッドというワイルドな出で立ちのブロンクスのスキンズ。
映画では駅に行く途中のウォリアーズ達を見つけ、改造バスを乗り回して追いかけてくる印象的なシーンがあるのですが、もちろん完全再現されており、感激です。
アジト戦では、スキンズバンドによるライブ演奏(もちろんハードコア)をバックに大乱闘できるという激燃えシチュエーションもあり、ロックスターによる粋な演出を楽しめます。
警察との乱闘や、リボルバーを持ち出してくるボスなど、見た目同様に凶暴性はハンパ無いAC'S。やはりここはハードコアの街ブロンクス、油断は禁物だ!
「BASSBALL FURIES」
(from Manhattan)
いまだにTシャツが発売されたりするなどの圧倒的人気を誇るマンハッタンの野球狂チーム。
なんといっても特異なメイクに、野球のユニフォームという俺ジナルすぎるスタイルで、多くの熱狂的ファンを生み出したフューリーズ。バット片手に野球場で大乱闘するのですが、あっさりやられたりと見掛け倒しなところもナイスです(笑)
どう見てもプロレスラーな親玉が出てきたり(マスクに3連バット装備で激怖です笑)、ピクチャーレーベルが彼らの顔になっていたりなど、製作陣も大好きであろうチーム。ある意味、この作品を代表するチームなんじゃないでしょうか。
このようにかなり個性的なチームが多く登場し、映画ではほとんど出番の無かったチームや、本当に一瞬映っただけのチームもフィーチャーされており、サプライズ感満載です。
また、海外のファンサイトによるとこの映画には実に83にも上るギャングチームが登場しているらしいです。多すぎだろ!(笑)
ロックスター魂
ゲームは映画以前から始まり、集会の3ヶ月前からの物語となります。
実は映画の部分というのは全18チャプター中、後半の5チャプターだけなので、ほとんどが集会までの前日譚となってます。映画の冒頭で少ししか出てこないチームでも、ウォリアーズと過去にこんな因縁があったなど、ifの部分を徹底的に作りこんでおり、ロックスターの映画に対するリスペクトと愛情がひしひしと伝わってきます。
また、チャプターをクリアしたり、特定の場所でグラフティしたりするとアンロックされていく「ランブルモード」や、次項で解説するウォリアーズ結成までの秘話「フラッシュバック」なるものもありやりこみ要素も◎。ランブルモードでは屋上から投げ落としまくる「バトルロイヤル」、9対9の乱闘「アーミーング」、車椅子レース「ウィールズ・オブ・スチール」などいろいろ遊べ、骨の髄まで楽しむことが出来ます。
チャプターが終わって一段落すると、ウォリアーズのアジトをうろつくことができ、ぶらっとコニーアイランドに出てみたり、体を鍛えて強化することもできたりと、遊び心満載です。
必見!フラッシュバックモード
様々な要素がある中でも特に個人的にお気に入りなのがこの「フラッシュバック」モードで、ウォリアーズの面々が如何にしてメンバーに加わったかが描かれています。
全部で5チャプター存在し、ウォリアーズ結成の「クリオン&ヴァーミン」編、主人公登場の「スワン」編、ゲームでも女たらしの「エイジャックス& スノウ」編など、映画のファンならニヤリとする場面も多く、最高です。ちなみに少しネタバレになりますが、ウォリアーズのボスであるクリオンはもともと「DESTROYERS」のメンバーで、いざこざがあった後、脱退してウォリーアーズを結成したのです。何かと因縁をつけてくるのはこういう理由があったのか!と納得です。
いわば外伝的なモードですが、このモードでしか出てこないロケーションやギャングチームもあり、各チャプターとも丁寧に作られており、非常に楽しいです。
最後に一つオマケ要素を!フラッシュバックを全てクリアすると、アジトに置いてあるゲーム筐体で「アーミー・オブ・ザ・ナイト」という横スクロールアクションゲームが遊べるのです!
今までに戦った敵のチームが総登場する、いわばウォリアーズ版ダブルドラゴンとなっておりノスタルジー感満載で最高なのです!グラフィックが多少チープとなり、BGMはスーファミの様なファミコンサウンドと気合十分。 しかも画面はちゃんと4:3になるというこだわりの逸品(笑)
全部で5面存在し、クリアすると対戦で使えるキャラ等がアンロックされるみたいなのですが、クレジットは固定の7つしかないので意外と難しいです。自分はどう頑張っても2面の最後までしか行けませんでした(笑) お互いカバーしながらの2人プレイ推奨です!
エスケープ・フロム・ブロンクス
本編の方に話を戻しますと、後半の5チャプターは映画の完全再現となっており、フューリーズとの戦いや、男子トイレでのパンクスとの乱闘、浜辺での決闘等、数々の名場面をプレイできます。また、ムービーや画面構成なども再現されているところが多く、特にオープニングの再現度は「い…一緒やん」と漏らしてしまうほどの高い完成度を誇っています。
街中のチームが「RIFFS」の呼びかけでウォリアーズを狙ってる中、死に物狂いでたどり着いたコニーランド。そこには濡れ衣を着せた張本人「ROGUES」が待ち伏せしていた…。もちろん決着をつけることになるのですがゲームならではの展開もあり必見です。
このローグス、見た目は完全に80年代スラッシュメタルのそれですが、格好は劇中で一番垢抜けておりかなり渋いです。
しかし、この映画が好きな人は楽しめること間違いないのですが、やはり乱闘に次ぐ乱闘なので人によって単調に感じてしまう人がいるかもしれませんし、戦闘以外では出来ることが少なく、お金を貯めても回復薬を買うか、スプレー缶を買うぐらいしか使い道が無いのもちょっと悲しいですね。オープンフィールド系の自由度を期待すると肩透かしを食らうかもしれません。
Warriorsよ永遠に
映画が公開してから実に20数年経ってからのゲーム化というのは、やはりこの映画の持つ魅力にあると思います。向かう所敵しかいない街を駆け抜け、時にはピンチになりながらも協力してホームを目指す。たった一夜の物語なのですが、バイオレンスな中にも友情、ロマンスなどをさらっと織り交ぜながら描いた快作でもあると思います。
機会があれば是非プレイしてみてください。あとストーリーモード、ランブルモード共に画面分割による2人プレイに対応していますので、違いの分かる友人とどうぞ(笑)
個人的には次世代機でのリメイクや続編を期待しているのですが、まぁ…無いでしょう。しかし、実は過去に本作の精神的続編である「We Are the Mods」という1960年代のイギリスを舞台とした”モッズとロッカーの対立”を描いたゲームが計画されていたみたいです。2024年現在何も音沙汰は無いですが、妙にそそる設定なのでいつか日の目を見ることを期待しています。
また、XBOX360では本作のオマケモードの様な横スクロールアクションである「The Warriors Street Brawl」が配信されていました。海外のみなので自己責任ですが、何故か日本語に対応しているらしいので、興味があればチェックしてみてください。以上。